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「あはっ。お前、俺の腹の中で俺を食べたな。だからこんなに血だらけなんだな。じゃあ俺はからっぽなんだな。俺はもう俺じゃないんだな。あははは」
男はカクカクと頭(こうべ)を垂れたまま笑い、蜥蜴の尻尾を掴んだ。蜥蜴はビクビクと動き、逃げ出そうと足掻いているようだった。
「あはは、お前は俺を食った。俺は俺じゃない。じゃあ俺はどこへいった? あはっそうか、俺はお前になったのか! あは、イヒ、ひひひひひひ」
男は笑う。血だらけの口を三日月に曲げ、涙を流し鼻水を垂れ流しながら。血だらけながらも変わることなく美しい蜥蜴とは大違いな程に、男は醜かった。
「でも、駄目だ」
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