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ずずずずるるず、ずずずずーっ。……ぐちゃ。 いつの間にか、男はまたあの絵のところに戻ってきていた。最早、どこをどう歩いてきたのかさえ記憶がない男は、ただ音から逃げたい衝動のみで動いていた。絵の蜥蜴は先程と変わらずそこでもがいているのに、男の運命は何が何処でおかしくなったのか、と頭を掻きむしる。 ぞるり。ぞる、ずるり。ずる、ぐちゃくぢ。 音は段々と酷くなる一方で、男はもう発狂してしまいそうだった。音。そう、音だ。 「……そうか」 男は咄嗟に耳を塞いだ。すっかり忘れていたが、耳を塞げば音は消えるはずだ。なんでこんな単純なことを忘れていたんだ!! やっと音から解放される。これでやっと……!! しかし男が安堵しかけた矢先。 ぞるぞるぞりっ。ずずずずーっぐちゃぐちゃ、ぐちゃ。 何故か音は止まなかった。それどころか、音は耳を塞いだ途端に、完全に世界を支配してしまった。 大きく響き渡る音。最早追い掛けてくるなどというものではなく、音という音がそれに汚染されてしまったようだった。何故、どうして。 「やめろ、やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ!!!! やめてくれよ!!!!」 意味が分からず、奇声を上げる男。耳を引っ掻き回し、跪づいて頭を床にたたき付けた。しかし激痛と血が滲むだけで、音が止むことはない。 その時、男は気付いた。よくよく考えれば、この音はどこから聞こえている? 耳を塞げば大きくなる音。簡単なことだったのだ。そうその音の発生源、そこは――。 「……俺?」
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