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「人の間ではネコは体力が落ちると安静な所でゆっくり休むから死に際にいなくなる。なんて言いますが、私はそれだけじゃないと思うんです。」
「それだけじゃない?」
マスターの唐突な一言に思わずオウム返しで聞き返した。
「ええ、猫にだって想いはあります。大切な人を悲しませたくないという想い。大切な人に笑っていてもらいたいという想い。だからこそ、自分がいなくなる事で『あいつはまだどこかで生きている』と希望を持ってもらう事で。大切な人の笑顔を、守ろうとする事だってあると思うんです。
だから、胸を張ってください。俺は守りたい場所を作ってやれたんだ。大切な人になれたんだって」
そういってマスターはまた、優しそうな笑みを浮かべる。この人たちはこの人達なりに俺のことを考えて、気休めじゃなく、考えた言葉で答えをくれた。その想いに頬はまた涙で濡れ、そのぐずぐずの顔が見られたくなかったのと感謝の想いを込めて深く、深く頭を下げた。
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