1匹目『それは、ヒトのように……』

18/20

2人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
そして顔を上げた時、不思議な事が起こったのだ。 なぜかマスターは人間程の大きさの猫になっていた。 服装はさっきまでと一緒、パリッとしたシャツに黒いベスト、蝶ネクタイをしたもので。しかし顔だけが猫に摩り替わっていた。 「またのお越しをお待ちしております」 その猫はやはり先ほどのマスターと同じ声で、やはり同じ優しそうな笑顔で一礼する。 思わず目を擦るともう目の前にはその光景は無く。 ステンドグラスの入った扉も天へと続きそうな階段も無かった。 表れたのは夕焼け空と通学路で壁に向かって泣いている自分。 夏が見せた白昼夢だったのか。 竜への想いが見せた幻だったのか。 それは分からなかったけど、少しだけ、気持ちはすっきりとしていた。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加