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そして顔を上げた時、不思議な事が起こったのだ。
なぜかマスターは人間程の大きさの猫になっていた。
服装はさっきまでと一緒、パリッとしたシャツに黒いベスト、蝶ネクタイをしたもので。しかし顔だけが猫に摩り替わっていた。
「またのお越しをお待ちしております」
その猫はやはり先ほどのマスターと同じ声で、やはり同じ優しそうな笑顔で一礼する。
思わず目を擦るともう目の前にはその光景は無く。
ステンドグラスの入った扉も天へと続きそうな階段も無かった。
表れたのは夕焼け空と通学路で壁に向かって泣いている自分。
夏が見せた白昼夢だったのか。
竜への想いが見せた幻だったのか。
それは分からなかったけど、少しだけ、気持ちはすっきりとしていた。
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