1匹目『それは、ヒトのように……』

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ドアを押して開くとカランカランと軽快にカウベルの鳴る音がする。 火照った体を冷やす気持ちのいい空気と中の会話が外に漏れ、それを聞きながら店内へと入る。 「もうっ!マスターからも言ってくださいよっ!」 「ふふふ、虎之助さん。あまりその子をいじめないであげてください。」 「俺ァいじめてなんていねぇさ。ちょっと老人の戯言に付き合わせてるだけさ」 店内の正面はレジスター、その隣にはカウンターテーブル、店の奥にはボックス席もあるようだ。全体的に落ち着いた木目調で統一され、カウンター奥の棚には黒と白の食器や調度品が並ぶ。 その手前、カウンターの前には温和そうな長身痩躯の男性が1人。Yシャツに黒いベスト、蝶ネクタイを結んだ男性は拭いていたグラスを手元に置くと「いらっしゃいませ」とお辞儀をする。 思わず「ど、どうも」とこちらも頭を下げてしまった。
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