1808人が本棚に入れています
本棚に追加
/95ページ
それからの数時間、ノエルは猫可愛がりじゃないが……とにかく構いまくってきた。話半分、スキンシップ半分くらいの割合で少し戸惑ったが、それも初めのうちの事。すぐに抵抗出来なくなってしまった。
悔しい。悔しいが、認めざるを得ない。ノエルのなでなでは新たな世界への扉を開くに二十分な快楽を身体に教え込んだ。抵抗なんて、する気が起きる訳がない。
『眠いの?』
「だいじょぉぶぅん……」
このやり取りを何回繰り返しただろうか。何度も意識を落とされかけ、どうにか保っているのはとっくにバレているのに、ノエルの手が休まる気配はない。彼女はこのまま寝かしつける気なのだ。
抗えそうもない。そう思った矢先に、ピタリ。頭を撫でつけていた心地良さが不自然に止まって、意識が微睡みの中からゆっくりと浮かび上がる。
「どうか、した?」
『外には、危険なものがたくさんある。小さいもの、大きいもの、目に見えるもの、見えないもの。本当に、たくさん』
「うん」
『私は、シューに危ない目に遭って欲しくない』
蜂蜜色の瞳が、じっとこちらを見つめていた。心配そうなその視線に、何も言わず微笑みだけ返す 。
『それでも、行くの?』
「うん……でも、大丈夫。大丈夫だよ」
『シュー?』
「なんたって、運が良いからね」
そう、誰がなんと言おうと自分は強運の持ち主。こんなにもいい人と出会う事が出来たのだから、これからの全てがきっと上手くいく。そんな気がするのだ。
最初のコメントを投稿しよう!