否定する女

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 私は内気な性格なので、自分から思いを伝えるなんて無理。  だからきっかけを敢えて作り、私に話しかける機会を逆に与えようと、いろいろ仕掛けてみた。  立てかけていた傘をわざと彼の足元に倒してみたり、よろけた振りをしてぶつかろうとしたり……  けれど、彼には届かなかった。  傘を倒そうとした時は、前の席に座っていたおばさんに気付かれて拾われたし、ぶつかろうとした時は、ちょうどバスが揺れてあらぬ方向によろけ、知らないおじさんの胸に飛び込んでしまった。  ことごとく失敗した私に、同じことをまた仕掛ける勇気はない。  “好きになった方が負け”  ふいに聞き覚えのある言葉が頭に浮かび上がり、何だか悔しくなった私は、負けたまま引き下がることを恐れ、友達に相談をした。      * * * 「わざと傘を倒して拾わせようとしたり、ぶつかろうとして失敗したりってことがあってさ……」 「そんなことをするなんて、よっぽどあんたが好きなんだね」 「……うん。私もそう思う」  二人の立場を、入れ替えた。    ―+―+―+―+―     『否定する女』        完    ―+―+―+―+―
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