受け継ぐ男

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 学生時代の俺は、とにかく何にでも、一生懸命取り組んでいた。  小学生の頃、足が速いからと、運動会のクラスリレーでアンカーに抜擢され、見事一位になった。  中学生の頃、サッカー部に入部し、毎日懸命に練習していたら、二年でレギュラーを勝ち取った。  高校生の頃、部活よりも勉強を優先していたら、成績はみるみる上がり、学年トップになった。  大学生になり、部活より勉強より流行に夢中になっていると、性別関係なくわんさか寄ってきた。  そうして、学生時代が終わる。  俺は、就職活動をしなかった。  なぜなら、父が経営していた店を継ぐつもりだったからだ。  ……しかし。  父は交通事故で亡くなった。  父が亡くなったのは、三月末。  四月に入ったら、父からいろいろと教わることになっていた。  でも、父はもういない。  俺は一人っ子だから、母を支えるのは俺の役目であるはずだ。  ただ、もしかしたら泣き叫んでいる母よりも、俺の方がショックを受けていたかもしれない。
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