受け継ぐ男

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 他の男友達は、未成年でも酒を飲んでいたが、小さい頃から父の夢を聞かされていた俺は、友達の飲みの誘いには乗らなかった。  その場には参加していても、酒には一切手を出さなかったのだ。  最初は友達から、空気読めよ、と怒られたのだが、俺が父の夢に付き合ってやりたいと話すと、次回からは無理に勧めなくなった。  昔から、家に友達を呼ぶと、父も一緒になって遊んでいた。  大学生にもなると、家族より友達と行く方が楽しいという人が多い中、俺の友達は皆、俺の家族と行くキャンプが一番だと言う。  瞬く間に打ち解ける父は、俺の歴代の友達からも好かれていた。  だからか、夢の話を聞いた友達は、父の夢を大事にしてくれた。  父の長年の夢は、いつの間にか俺の夢にもなっていたようだ。  父と一緒に、酒が飲みたい。  二人は居酒屋へ入り、声を揃えて、「ビール!」と言った。  ビールが運ばれると、ジョッキをカチリと鳴らし、乾杯する。 「二十歳の誕生日、おめでとう」  父はそう言って、泣き出した。 「ありがとう、父さん」  俺もつられて、泣いた。
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