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俺と父に、血の繋がりはない。
母の連れ子として父と対面したのだが、あまりに幼い頃のことだったので、俺の記憶にはない。
俺と父は、顔は全く似ていないけれど、性格はよく似ている。
これを嬉しそうに言う。
母の、口癖だった。
通夜が終わったら、父の右腕となっていた人から仕事を教わる。
俺は、父の後継者。
……しっかりしなきゃ。
棺に寝かされた父の顔を覗き、俺は父に、最期の言葉を贈る。
「父さん、俺が受け継ぐからね」
* * *
「坊ちゃん、これで完璧ですね」
「……うん。ありがとう」
父の仕事を完璧に引き継いだ。どうせなら、父が築き上げたこの店に、父の面影を残したい。性格が似ている俺なら、できるはず。
気合いを入れようと、鏡の前に立つ。目を瞑り、父の生前の記憶をたどっていく。目を開けた。
「──よし、完璧」
チラリと店の看板を見る。
『街の美容整形外科』
──俺はしっかりと、父の店と“顔”を、受け継いだ。
―+―+―+―+―
『受け継ぐ男』
完
―+―+―+―+―
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