61人が本棚に入れています
本棚に追加
俺は、いつも決まった時間の電車に乗っているわけではない。
仕事が定時に終われば夕方の電車に乗ることができるが、残業で終電間際になることだってある。
それなのに、彼女とはほぼ毎日同じ電車に乗り合わせていた。
彼女と同じ電車に乗り合わせることのメリットは、その美貌を拝んで癒しをもらうだけではない。
なぜか、彼女の両隣に座る人は毎回、濃いキャラが多いのだ。
仕事に明け暮れ、立ったまま眠っては乗り過ごすような毎日であったが、彼女と同じ電車に乗るようになってからは観察に忙しく、一切として退屈しなくなった。
今や、一日の中でこの時間が、最も楽しみな一時となっている。
「○○駅~、○○駅~」
斜めに傾けていた足をまっすぐに立て直し、彼女は立ち上がる。
ドアが開くと、大きな駅のホームへ乗客がドッと流れていく。
彼女と共に、電車を降りた。
最初のコメントを投稿しよう!