観察する男

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「いい加減にしてください」 「……へ?」  電車の中ではどんなに周りがうるさかろうと、眉一つ動かさない彼女だが、今目の前にいる彼女は眉間にしわまで寄せている。  明らかに、怒っていた。 「えーと……」 「いつもいつも、後を尾けるのはやめてもらえませんか」  ……なるほど。  綺麗な顔立ちをした彼女が、顔を崩してまで眉間にしわを寄せている訳を、俺は何とか理解した。  俺が、ストーカーだと。  そう言いたいんだな?  彼女と出会って、数ヶ月。  俺はその間にあった、ある日の出来事を思い返していた。      * * *  ある日。仕事を終えて帰宅した俺は、数日前に参列した、友人の結婚式の時の写真を眺めている。  結婚式当日、カメラを忘れてしまった俺は、共に参列していた別の友人に、撮った写真を後で家に送ってくれないかと頼んでいた。  その数日後、帰宅すると写真入りの封筒がポストに入っていたので、缶ビールをぐびぐびと飲みながら大量の写真を取り出した。
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