207人が本棚に入れています
本棚に追加
「いやいやいや、あんたが出した命令だろう!」
揺さぶられながらも反論すれば、それもそうねとあっさり引き下がる。
「兄さんでも誘おうかしら。でもそうするといつもと同じなのよね」
独り言を言いながら、資料を片づけ始めると、手元にコトリと小さな箱が置かれる。
「ん?」
「先月の、礼だ」
それだけ言って、ヴァルは足早に去っていった。
その純情っぷりというか、なぜか照れているあたりが、小さな少年のように感じて、その箱を手に取ると、自然と笑みがこぼれた。
思い出すだけでにやけてくる。
「また顔が大変なことになってるぞ」
頬杖をついたロランが、空いた片手でシルヴィアの頬をつつく。
「ねえ、兄さん」
「なんだ?」
「嬉しいときって、にやにやするものでしょう?」
不器用な親友兼弟分が可愛くて仕方がない。
その扱いを彼は嫌うけれど、相変わらずのかわいらしさが、お礼のクッキーとともに、小さな箱に詰まっていた。
最初のコメントを投稿しよう!