侍女と色男

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 油断をしてはならなかった。 「そのうちあんたの主に挨拶しに行くよ。そん時ゃ、あんたの主が言うこと聞いてくれるとありがたいね」 「……」 「本当の姿さらしてないから信用ならねぇってか?」  イレーヌの心情は読めたらしく、参ったなぁと言いながら頭をかいた。 「カツラもとるわけにゃいかねぇな。ま、次会った時な」  そう言って男はさっさと椿たちのいる隣の座敷に戻っていった。      ‥†*†‥ 「睡蓮?」  男が座敷に戻ってからどれくらい経ったのだろう?なかなか戻らないイレーヌを心配してくれたらしい椿が襖を開けてこちらをのぞいていた。 「申し訳ありません」 「どうされんした?」 「いえ……」  イレーヌの頭を支配するのはあの男の瞳だ。  去り際に見た挑戦的な瞳は、緑色だった。間違いない。だが、それだけで驚いたのではなかった。  何故金色が?  座敷から漏れてくる明かりなのか、それとも外の明かりなのか、それは分からないが、何かの光が緑色の瞳に当たったとき、その中に金色が見えたのだ。
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