ある女侯爵の追想

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「おまえは相変わらずふざけている。ジェラルド王子におまえと先代の性格が強く影響していると聞いているぞ。先代はともかく、おまえはもっとしゃんとしろ」  厳しく言い放ち、さっさと教会に入ってしまう。  余談だが、基本的にこの国の宗教は服装の色にこだわらない。だから母もジョージアナも今日は赤い服だった。色はその時の気分のようだが、侍女頭が二人の色を合わせようとしているようだ。 「行こうか」  笑って手を差し出してくれるこの人がまさか散々人を殺して、その手を血に染めているなんて誰が想像するだろう? 「公爵だけなの?」 「夜だからね」  私じゃダメかな?と悪戯っぽく笑いながらジョージアナの頭を軽く撫でる。  久しぶりの感覚だった。手袋越しにも暖かいと感じるこの手はやはり人に手をかけているなんて想像できなかった。 「お母さんのこと、寂しいかもしれないけど、君のお母さんは、シャーロットは優しい人だよ」
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