鴉と王子様

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「あの子はアリスラーナのフィオン殿下だよ。あの子には噂があってね、人の居場所を突き止めたり、名乗っていないのに名前を当てたり、ね」  名前を当てられたから主は笑っているのだろうか?それの何が幸運につながるのか、レイヴンにはやっぱり分からない。 「見つけてもらえたり、名を当ててもらえた人は、幸運の魔法をかける王子様のお気に入りってことなんだって。お気に入りたちにはその後良いことばっかりあったらしいよ」 「良いこと……」 「よかったじゃないか、レイヴン」  これでようやくつながり、レイヴンの頭はすっきりとする。そこではっとした。 「ジェラルド様、早速良いことがありました」 「ん?」 「すっきりしました」  一瞬きょとんとした主は、すぐに理解して笑った。 「噂通りだね。さて、あいつは認めてもらえたかな?」 「アルフォンス様ですか?」 「フィオン殿下に気に入られたら結婚式は絶対成功するだろうな」  春の日だまりみたいな、のんびりした笑顔を思い出し、アルフォンスを思い出す。  主の弟君には失礼だが、正直あの王子が気に入るとは思わない。
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