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暖炉の前に座り込むのはいつぶりだろうか?
幼い頃は、叔父の屋敷に遊びに来ているときによくしていたが、城にいる間や、叔父が死んでからは一切していない。
ぱちりぱちりとはぜる暖炉の火が、この場所で起きたたくさんの小さな幸せがこもった出来事をジェラルドはゆっくりと思い出す。
小さな自分が、当時子供の居なかった叔父夫婦の間に挟まれて座っている。微笑みかける叔父、髪をなでてくれる叔母。
実の両親以上に、肌で感じる愛情をくれた人たちはもう思い出の人だが、それでも鮮やかに生きている。
かすかに思い出すその優しい体温がひどく懐かしくて、ジェラルドは目を閉じた。
「ジェラルド?」
思い出ではない、生きた人間の、ほんのりとした温かさが髪にふれて、はっとする。
名前を呼ぶ声は叔父夫婦ではなく、今一番大切な人のものだった。
「眠いの?」
同じように座ったレティシアの膝に、戯れで頭を乗せると、上から戸惑っているのが雰囲気で伝わる。
ゆるりと首を振り、上を見上げると、困惑よりも心配の色が勝る碧眼と目があった。
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