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それだけで穏やかな気持ちになれて、暖炉の温もりもあってか、自然と笑みが浮かぶ。
それに安心したらしいレティシアもふわりと笑った。髪をおずおずとなでる手が、叔母のものではないのに、ひどく安心する。
温かくて、今の自分の手より少し小さいそれ。小さいくせに与えてくれるものはそこに収まらないほど大きくて、たくさんあった。
「あともう少しで一年が終わるわ」
その言葉に促されて、暖炉の上の置き時計を見ると、時計は今年の残り時間が五分しかないことを告げる。
「一年間、楽しかったわ」
あなたといれたから。
少しはにかんで告げられる言葉は、また彼女が思う以上の大きさを持っている。
「来年も、たくさんの人が幸せな一年でありますように」
髪をなでる手を取って、そのこうに口づけると、レティシアは少し赤くなる。
それでも手を引っ込めることはなく、ジェラルドのされるがままになった。
「それから……あなたがたくさん笑ってくれる年になりますように」
「君のそばにいられますように」
突然告げられた言葉に、レティシアはきょとんとする。
「僕が願うのはそれだけだよ」
目を閉じたのに、なんとなく彼女が笑ったのがわかる。
「ありがとう」
歯車が回って、時計の鐘がなる。
「あけましておめでとうございます」
目を閉じたまま新年を迎えたジェラルドの額に、そっとレティシアの唇が落とされた。
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