聖女様の昼下がり

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「いやいやいや、あんたが出した命令だろう!」  揺さぶられながらも反論すれば、それもそうねとあっさり引き下がる。 「兄さんでも誘おうかしら。でもそうするといつもと同じなのよね」  独り言を言いながら、資料を片づけ始めると、手元にコトリと小さな箱が置かれる。 「ん?」 「先月の、礼だ」  それだけ言って、ヴァルは足早に去っていった。  その純情っぷりというか、なぜか照れているあたりが、小さな少年のように感じて、その箱を手に取ると、自然と笑みがこぼれた。  思い出すだけでにやけてくる。 「また顔が大変なことになってるぞ」  頬杖をついたロランが、空いた片手でシルヴィアの頬をつつく。 「ねえ、兄さん」 「なんだ?」 「嬉しいときって、にやにやするものでしょう?」  不器用な親友兼弟分が可愛くて仕方がない。  その扱いを彼は嫌うけれど、相変わらずのかわいらしさが、お礼のクッキーとともに、小さな箱に詰まっていた。
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