第1章『豊中』

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 新種発見者は、亜獣の名前を付けることができた。それをオーパムは、遭遇した地球人に決めさせた。ダイバーにとって、それはちょっとしたご褒美だった。  それを知っていたゆいりは入院中に考えていた。 「では、サイクロプス、と」  ゆいりは短く告げた。ギリシャ神話に登場する一ツ目巨人族の名だ。  亜獣には、想像上のモンスターの名が冠されることが多かった。しかしピントのずれたネーミングだと誰かが別のニックネームを使い出し、結局それが多用されることもあった。「カラスヒル」なんかがいい例である。  よろしい、と担当官は言って、端末へ入力した。  今回のダイブのレポートの提出を求められて、ゆいりはセンターを後にした。    ☆  豊中の自宅は、阪急豊中駅近くにあった。
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