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「待っていました。あちらへどうぞ」
指し示した先は、いつものテーブルセット。
が、そこには先客がいた。若い男だった。二十代前半か……。刈り込んだ茶髪が逆立ち、アーミージャケットが似合っている。座っていてもその上背の高さがわかった。きっと筋肉質の体をしているのだろう、格闘技かなにかやっていそうな汗くさい雰囲気を辺りに強烈に漂わせて臭いそうだった。
いかにも屈強そうで、ダイバーにはぴったりだ。大金を稼がなければならないからこの職を選んだというよりも、ほかの職業ではもてあましてしまう肉体のために、といった感じがすごくした。亜獣と闘うマッチョマン。ゆいりは、半裸で猛獣と闘う古代ローマの戦士を思い浮かべた。
「こんにちは」
声をかけて隣のイスにかけると、男はゆいりを見て目を見開いた。
「や、これはこれは……」
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