プロローグ

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 地下街から、大阪駅前第三ビルの出入り口を抜けて地上へ出てきたゆいりは、雨に濡れるのもかまわず、痛む足を引きずりながら、御堂筋を大阪駅方面へ向かっていた。そこに、エリア・オーサカからの脱出口――ゲートがあるはずだった。  春が近いとはいえ、この季節、雨は冷たく、落ちていた体力をさらに奪っていく。一刻も早くここから脱出しなければならない。  御堂筋を北上する。  背の高いビルに挟まれた車道には、放置されたクルマが延々とならび、走行する車は一台もない。  阪急百貨店の東側から、船の舳先のようなナビオ阪急、赤い観覧車を乗せたHEPナビオの脇を通過したとき、いくつもの黒い物体がゆいりに向かって飛びかかってきた。平らな円盤のような形状でカラスほどの大きさ。表面は雨に濡れて黒光りし、異星の生命体を連想させた。 「来たか……」  つぶやき、予想どおりの展開に、唇をゆがめて小さく苦笑すると、刀をぬいた。
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