第2章『南港』

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 男は、挨拶を返すのも忘れて驚き、 「あんたも、ダイバーを?」  と信じられないようだった。彼の頭の中にはダイバーになれるような人間はアメフト選手のようなごつい男だけだという思い込みがあったに違いない。  はい、とゆいりはわざと澄ましてこたえた。 「チームメイト、ですよね? よろしく」 「こちらこそ……」  困惑を含んだ声で会釈される。  沈黙。  時計は指定時間の三分前。  担当官がやってきて、二人の真向かいの席についた。  話を始めるのかと思ったが、まだあと一人来ていない。チームを組むのは三人ではなかったのか。欠席?
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