第2章『南港』

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「では説明に入る」  担当官がキーボードを操作すると、テーブル上のディスプレイに大阪の地図が表示された。 「あなたがた三人はそれぞれダイバーとしての実績がある。三人でかかれば、新種の手強い亜獣であっても対応できるだろうと思われる。しかし、いきなりでは、おそらく困難であるだろうから、まずは調整の意味で、べつの場所で亜獣と闘ってもらいたい。今回のダイブ地点はここである」  地図が拡大されていく。海岸へ移動し、そして、南港の辺りで表示が固定された。 「埋め立て地で海に近いここに、大型亜獣の出現が確認されている。地下と違って動きやすいので、訓練には最適と考えられる。危険があれば、退避できる」  大阪南港。  広大な埋め立て地だが、空き地が多い。鉄道まで通っていたが、大阪市街中心部から遠く、また船舶貨物の取り扱い量の伸び悩み、工場の海外移転など、さまざまな要因によって土地は売れなかった。  夜になれば無人の地域に海風が吹き抜けた。用事がなければ、ふらっと訪れるような場所ではなかった。
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