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とはいえ、あの頭の硬そうな大男といっしょにチームを組んで事に当たらねばならないのだし、どういう作戦を立てて臨むかは一応考えておくべきだろう。そのためには――。
ゆいりは、傍らにすわる少女を一瞥する。さっきから一言も口をきかない。どこから見てもか弱そうな印象。やせぎすで健康そうには見えなかった。膝においた、パーカーの袖口から半分だけのぞく手の甲がろうそくのように白かった。
紀崎ではないが、ダイバーだと言われてもちょっと信じ難い。
ゆいりでさえも、亜獣との戦いでは苦労の連続だった。そのことを思い返すと、少女にはなにか自分にはない特殊な能力を持っているとしか考えられなかった。
ゆいりは肩をすくめ、
「よろしくね。あのお兄さんは帰っちゃったけど、わたしたちはわたしたちで作戦を考えましょ。れみるちゃん、って呼んでいいかな?」
神田れみるは、機械のように首をめぐらせ、ゆいりを見つめた。漂白したような色白の顔に、瞳が冷たかった。
ゆいりは少し背筋に悪寒を感じた。
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