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斬妖丸を一振りして雨粒をとばすと、大きく息を吐いた。残された気力を振り絞って突撃した。
戦うつもりはない。今のゆいりにあの生物を倒す力はない。脇をすり抜けて、ゲートへ飛び込む。もし行く手をふさがれたら、そのときは一太刀あびせて、道を開くのみ。
異形の獣が、接近するゆいりのほうを向く。頭部に大きな角が二本。どこかに目があるのだろうが、どこにあるかわからない。古今東西の動物図鑑を開いても、見ることはない姿だ。
ゆいりは、その形状をいちいち気にしない。ここ、エリア・オーサカ内では、それぐらいでは驚くに値しないのだ。
獣の口が威嚇するように大きく開いた。
ゆいりは、衝突する五メートルほど手前で跳躍した。
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