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獣を飛び越えた先にゲートが口を開けている。穴のようには見えない、漆黒の出口が、明らかに通常の空間とは違うものとして存在していた。そこへ飛び込んだ。
つぎの瞬間、ゆいりの体はべつの空間にあった。
☆
大きな河がゆっくりと流れていた。その川岸の、伸び放題の草むらのなかのコンクリートで舗装された場所に、彼女は倒れていた。
意識ははっきりしていたが、起きあがる体力が残っていなかった。冷たい雨はここでも降っており、低下した体力をさらに奪ってゆく。
ゆいりは待った。回収されるのを――。
このまま死んでしまうことはないだろうと思ったが、待っている時間は異様に長く感じられた。意識がときどき途切れた。
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