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「ここよ」
そう言って女性が手に持ったプラカードで指示した場所は、地下へと続く急階段だった。
頭を振り上げてみて、看板からそこがバーである事に気付く。
「ここってバーですよね? 俺、まだ未成年なんですけど」
「つべこべ言ってると、ここから蹴落とすわよ!」
そう言いながら右足を膝の高さに振り上げる。
意外と……いや。かなり目がマジだ。
俺は仕方なく薄暗い階段を用心しながら降りて行った。
バーの入り口には斜めに『ビビッド』と書かれたプレートがぶら下げられていて、その下にはオマケのように『準備中』と書かれている。
試しに引っくり返して見ると、その裏には同じように『ビビッド』の下に、同じくオマケのように『営業中』と書かれていた。
って事は、だ。
「なんかまだ準備中みたいなんですけど」
「当たり前でしょ?」
俺の後から靴音を響かせながら降りてきた女性は、そのドアをノックもせずに外に向かって開いた。
明るさに一瞬目が眩んだ後に、俺に目の中に飛び込んできたものは……どこにでもありそうなカウンタバーだ。カウンターの向こうには顎に髭を生やし、黒髪をオールバックに寝かせ付けた細身のマスターがいて、まだ開店前だと云うのに、シェーカーを上下に振りながら、視線だけを訝しそうにこちらに向ける。
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