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重たい空気と薄暗い部屋にこだまする笑い声。
これがバーの開店時間だったら、きっとそこにいた客全てが逃げ出してしまうだろう。
「ま、座れよ、兄弟」
男は自分の座っていたソファーから少し身体をずらして、俺に座るスペースを開けた。
「なんだ? 緊張してるのか?」
「ええ……まぁ……」
「心配すんな。そんなに緊張しなくても取って食ったりなんてしやしねぇから。ここは悪のアジトなんかじゃねぇんだぞ。もっとも現行法からすりゃ、軽犯罪者の集団なんだろうけどよ」
「軽犯罪者?」
そう言われて俺はもう一度部屋の中を見回した。
「バーカ。お前のじいさんが作った法律に照らし合わせりゃ、って話だよ」
「ああ……じいちゃんの……」
「そ。ここはな。表立って斡旋できないようなバイトを専門に扱う裏稼業なのさ」
「ああ、それで」なるほど。
だからあのプラカードには『バイト募集』って書いてあったのか。
「お前、働きたいのか?」
男は急に真顔になって、俺の事を下から覗き込んできた。
「ええ……その……」
「はっきりしろよ。仕事が欲しいのか、欲しくないのか」
「あ……欲しい。欲しいです。今すぐにでも」
「はっはっは。そうか欲しいか。おい、友三子」
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