第一章 ビビッド

15/39
前へ
/109ページ
次へ
――犬、探しています―― 「迷い犬探し……ですか?」 「ああ、そうだ。ただな……ここで斡旋する以上、曰く付きだ、って事だけは理解してくれよ」 「曰く付き……」  そう言われて、再び画面を覗き込む。  破格の報奨金。その下に、国交のない国家元首の名前が…… 「これって?」 「お忍びで国交のない我が国に入り込んで、逃げられちまったんだとさ。愛犬に」 「ああ……だから公には依頼できない、と」 「やってくれるよな?」  そう言いながら、善之は再び下から舐めるように俺の顔を覗き込む。  これは依頼じゃない。完全に脅しだ。  俺には逆らう権利なんかない。  集まる視線に、俺は屈するように黙って首を縦に振った。 「よし。交渉成立だ。儲けはこちらが半分、お前が半分だ」  確かに破格の待遇。でも半分って…… 「なんだ? 金額に文句でもある、って顔だな」 「それでもぉ、金額的にはぁ、高校生がぁ、普通に稼げるようなぁ、ものじゃないとぉ、思いますよぉ? 大湖くん?」 「ふふふ……ボウヤも守銭奴だねぇ……」 「いえ、別に……」 「そっか。それじゃ期待してるぜ」  俺は眼鏡の子からプリントアウトされた詳細を受け取ると、バーカウンターの横をすり抜けて、元きた世界へと戻って行った。
/109ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加