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――犬、探しています――
「迷い犬探し……ですか?」
「ああ、そうだ。ただな……ここで斡旋する以上、曰く付きだ、って事だけは理解してくれよ」
「曰く付き……」
そう言われて、再び画面を覗き込む。
破格の報奨金。その下に、国交のない国家元首の名前が……
「これって?」
「お忍びで国交のない我が国に入り込んで、逃げられちまったんだとさ。愛犬に」
「ああ……だから公には依頼できない、と」
「やってくれるよな?」
そう言いながら、善之は再び下から舐めるように俺の顔を覗き込む。
これは依頼じゃない。完全に脅しだ。
俺には逆らう権利なんかない。
集まる視線に、俺は屈するように黙って首を縦に振った。
「よし。交渉成立だ。儲けはこちらが半分、お前が半分だ」
確かに破格の待遇。でも半分って……
「なんだ? 金額に文句でもある、って顔だな」
「それでもぉ、金額的にはぁ、高校生がぁ、普通に稼げるようなぁ、ものじゃないとぉ、思いますよぉ? 大湖くん?」
「ふふふ……ボウヤも守銭奴だねぇ……」
「いえ、別に……」
「そっか。それじゃ期待してるぜ」
俺は眼鏡の子からプリントアウトされた詳細を受け取ると、バーカウンターの横をすり抜けて、元きた世界へと戻って行った。
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