第一章 ビビッド

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 弱者……この場合、妹の翔子は、勝ち誇ったように、チャンネル権許可証を俺の前に振りかざしている。  許可証を発行しなかった俺の方がこの場合、どうやっても負け、となる。  高校一年生対小学六年生。とは言え強弱は肉体的な大きさで決まるものではない。  どちらが強いか、と言えば、もはや弱肉強食なんて言葉は、既に過去に置き去りにされた死語も同然だ。  世の中は事々然様にこの流れの中で成立していると言っても過言ではない。  例えば授業中、生徒を指名するのにも、いちいち教師が許可証を提示してから当てる。  生徒の方も、それを確認してから答える。  生徒側も授業中、トイレに行く許可証を提示してから向かう。  双方とも主張をする為の許可証なのだ。  それでもついつい宿題を忘れた……そんな時は事後承諾証を発行して、許可を得なければならない。その期間、二週間以内に発行しなければ、そこにどのような理由があろうと、その罪の大きさに拘わらず犯罪者として扱われる。但し、未成年である以上、問われるのはその親だ。 ――それが国民免許制度……
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