第一章 ビビッド

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「お兄ちゃんもテレビくらいバイトして買えばいいのに」 「うるさい。バイトするにもテレビを買うのにも許可、許可、許可。この国に自由はないのか」 「そんな事、おじいちゃんに言ってよね」  そりゃいちいちごもっともなご意見だが、じいちゃんは既に故人だ。今さら文句なんて言ったって何も始まりゃしない。  せめて十年前、当時の俺にちょっとくらい物心が芽生えていれば、文句のひとつも言ってやれたのに。まぁそんな事言ったって今さら仕方がないんだけど。  取り敢えず、再来週の番組表でも見ながら許可申請でもしておくか……そう思いながら自分の部屋に戻ってパソコンを開いてみて、俺は目を丸くした。  ……なんだ? これは……  二週間先まで翔子の申請許可で埋まっているじゃないか。う……ヤラレタ。  これは翔子の言うようにバイトでもしない限り、俺にチャンネル権なんて、この家にいる限り、一生戻ってはこない。  突き付けられた事実に、俺はため息をひとつ吐いて、街中へと飛び出して行った。
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