第一章 ビビッド

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 実際、俺がまだ子供の頃は、友達の親からも心ない事をよく言われたものだ。 「あんな人の孫とは遊んじゃいけません」って。  それでも定着から十年も経つと、人々の意識の中からもそんなマイナス要素はほとんど消え掛けていて、今ではわりと英雄の孫的扱いで、相手の方から近寄ってくるから不思議なものだ。  とは言え、孫である当の俺が、その事には納得できていなんだけど。  もし今俺が友達の親の立場なら、同じように『一緒に遊ぶな』って言ってしまいそうで。  それくらいの理不尽さを今でも感じて生きている。  そんな日曜日の午後。  許可証を発行してくれて、仕事の斡旋まで一手に担っている区役所も今日はお休みだ。  それでも誰も文句を言わない。俺の住んでいるここ、東京都足立区は実に平和だ。  これだけニーズがあるんだから、日曜日だって不眠不休で働きゃいいのに。まったく。
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