難イーテンサイー

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「――――――えー、コホン。次は剣術だ、コンディションを整えておけ」 あからさまに話を逸らされた……が、追及しても仕方ない。試験の方が重要だ。 「剣術……か」 そもそも前線で剣(ブレード)など使う暇など無いのだ。 あくまでも護身……もしくはとんでもなく剣の才に秀でた者が実戦で用いるくらいの実用度――― 「だが……大昔の旧日本国では実用化どころか主要武器とされていたんだよな」 ごく少ない過去の書籍で知ったのだが、未だ機能的な機械、いや電気も無い未発達の時代には旧日本国は様々な"武将(リーダー)"と呼ばれる統率者がバラバラに支配されていて、紛争が絶えなかったらしい。 それらの紛争に於いて用いられたのが"刀"と呼ばれた片刃の剣。刃の無い方を反らせた実用的な形をしている。 現存する"刀"は大日本帝国(旧日本国の滅亡後に再建された国家)に数十本のみとなってしまった。しかし現代でも、国によっては実戦運用されているらしい。 「西洋のものとは扱い方は全く異なるが……」 用意されている剣の中から"刀"を選んで手に取る。 それだけで、かつて"武将"と呼ばれた猛者たちが経験したであろう緊張感をひしひしと感じられるような気がした。 腰をほんの少し落とし、中段に構えて一振り。 シュッと空を切る。 「ん………いいな」 鞘に刀身を仕舞い、試験開場へ向かう。 体術の試験開場とは別の場所だ。
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