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色々と考え悩んでいるうちに、中間試験まで残り3日となってしまった。
鳥原との仲直り作戦も中途半端、試験勉強も中途半端。
行き詰まりに行き詰まり、俺は夜、こっそりと寮の屋上にやって来た。
星空でも見れば、何かいいアイデアが思い浮かぶかもしれない、という浅はかな考えだ。
屋上には既に先客がいて、俺はユーレイでも出たかと思ってかなりビビった。
先客は、一三四善司(にないぜんじ)。
善を司るなんてヒーローの申し子みたいな名前で羨ましいが、ニナイ自身は女子みたいにちっこい。色白で声変わりもまだで、顔も女の子みたいだ。体力も筋力もあまりなく、いつも必死で実技についてきている感じだ。
ニナイがよく屋上で天体観測をしていることは、俺も知っていた。
夜の点呼の後、小型望遠鏡を大事そうに抱えて、いそいそと廊下を歩く姿を何度も見たことがあるからだ。
天体観測の現場に居合わせるのは、今回が始めてだが。
ニナイは、俺が屋上に現れたことに驚いているようだった。
夜、暗い中で見るニナイは、色白の顔がぼんやりと浮かび上がって見えて、生首のようでちょっとコワイ。
「よお。何か見えるか?」
俺が声をかけると、ニナイは犬みたいにちょこっと首を傾げた。
「ショーマス彗星を見ようと思ったんだけど……」
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