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東京に越しても、俺は学校に行けずにいた。
家に閉じこもる中、何気なく観た特撮番組。
俺が観た回は、いじめられっ子の少年が悪の怪人にそそのかされて、日本を破滅させようとする話だった。
怪人は負のエネルギーを吸い取って力にする。
それと戦うのが、陽のエネルギーを力にするサンジャスティス。
天空で孤独に光り輝く、太陽の戦士。
罪を憎んで人を憎まずのヒーローだった。
サンジャスティスは悪の怪人から少年を救い出す。
助けられた少年はサンジャスティスに食ってかかる。
『邪魔するな! こんな世界、なくなってしまえばいいんだ!』
サンジャスティスは言う。
顔は仮面で覆われていて分からないが。
『君は強くなる。私には分かる。
力なき正義は無力だ。
君は泣くことしか出来ない。
君はまず、強くなり、君を助け、守り、そして許すんだ。
そして、君の周りの人を。
悪の道へ走ってはならない。
正義なき力は、ただの暴力だ。
悪の怪人はあらゆる手段を使って、君から正義を奪おうとする。
君は力の限り悪と戦わなければならない。
そのためには賢く、強く、機敏であれ。
辛いときがあっても忘れるな。
君は、君の正義を貫くんだ。
太陽は、見ている』
……俺に言われたのかと思った。
何故か分からないが、観ながらボロボロ泣いていた。
それから俺は、サンジャスティスに夢中になった。
サンジャスティスは孤独だけど強かった。
悪に対しては容赦ないが、人間に対してはとことん寛容で、どんな酷いことをされても許した。
サンジャスティスは人間より遥かに強いから、その気になれば人間なんて簡単に支配出来る。
でもそうしないのは、サンジャスティスが本当に強いからだ。
人間を救い、守り、許す。
それが彼の正義だった。
彼は悪を蹴散らし、その正義を貫く。
サンジャスティスのように強くなりたいと心から思った。
俺は許すんだ。
先生も、あのクラスメイト達も。
しばらくして、俺は学校に通い始めた。
勉強を頑張って、空手を始めて、スポーツクラブにも入った。
賢く、強く、機敏に。
太陽は、見ている。
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