眞柴

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屋上のも、実は映画の真似事で、本当は自殺する気はなかったんじゃないかと思っている。 俺の見当違いだったら傷を掘り返すのもナニなんで、眞柴にそのことを話したことはないが。 その眞柴が、最近、おかしい。 2年に進級してゴールデンウィークも過ぎ、中間試験が迫る頃。つまり、今現在。 眞柴はやたらとクラスメイトの一人の名前を口にするようになった。 鳥原亜紀。 ふっつーの女子だ。 顔も普通、成績は中の上、実技は中の下か? いつも何考えてるのか分からん無表情で、気付けば背後に立っていたりする。不気味で俺は苦手だ。 そんな鳥原の何を気に入ったのか俺にはさっぱりだが、眞柴はよく鳥原を話題にする。 俺が精魂込めて作り上げた、仲間の証であるヤタガラスのバッジを鳥原にあげたいと熱弁され、仕方なく眞柴に渡したら、その翌日にあげたらしい。 これはアレか、恋の病というやつか? 俺はそっち方面はさっぱりだし、親友の好みにとやかく言うつもりはないが、「早まるな」と言いたい。 眞柴ならもっと可愛い子でも高望みじゃないだろうに、なんで鳥原なんだ。 そんなふうに鳥原を意識しだしてから、俺の、鳥原に対する態度がビミョーになってしまった。 普通に接しようと思うんだが、俺の顔がこわばる。声もそっけなくなっているような気がする。 鳥原に対する俺の顔は、鳥原に負けないくらい無表情になっている自信がある。 ヒーローを目指す奴がこんなことでどうする、鳥原自身は多分悪いヤツじゃない、好き嫌いで差別しちゃいけない、と頭では思うんだが、駄目だ。 よく分からんが、生理的に受け付けない。 なんでこんな無表情女がいいのか、眞柴の神経を疑ってしまう。 って、ああ、また悪口になっちまってるし。
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