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タブレット端末で確認すると、もう二時を少し過ぎていた。真帆は眠れなかった。
冷たくて重い鎖が自分の足には絡まっている。そのことを自覚した。自覚すると、その冷たさは徐々に染み込み、身体を蝕んでいく。
その重みは心を闇の底へと引っ張っていこうとする。
怖い。
数年前に感じたそれよりも数倍怖かった。
その時、小学生の真帆は広いマンションでほとんど一人きりの生活を送っていた。科学者である両親は研究所にこもりっぱなし。
真帆は両親が研究補助用として自宅に置いている高性能PC機器の数々を自由に使えた。親譲りの才覚を持っていた彼女は、あっというまにそれらに精通する。
そして、無自覚だったとはいえ、罪を犯していた。ハッキングをしていたのだ。
それは特に意味のあることではなくて、単なる暇つぶしだった。それが真帆の遊びだったのだ。
しかしそのハッキングのせいで、どこかで誰かが傷ついたのだということを、両親から教わった。それを知った時、真帆は泣いた。
怖かった。自分が人を簡単に傷つけられる存在なのだということが恐ろしかった。
そして今、かつて傷つけたその誰かが、自分を見ている。
――どんな目で?
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