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そうだ、と頭の中で誰かが言った。おまえは人を傷つける力ばかり持っていて、世界のなんの役にも立たない『害』なんだ。消えちまえ。
違う。やめて。ごめんなさい。嫌だ。
真帆は頭の中に響く声に必死で抵抗した。東防中に入ってから学んだことを思い出そうとした。自分が人の役に立てるということを。
だけどそれはどれもちっぽけなことのようで、暗くて冷たい闇はそんなもの一息に呑み込んでしまうんだ。その闇は私の本質なんだ。
だけど、と他の誰かが言った。
だけど、光と闇は同じものなんだ。闇があるから光が見えるのだし、光があるから闇があって、それらは本質的に同じものなんだ。
私の闇は、私の光でもあるんだ。
顔を上げると、舞原は残念そうに笑った。
「なんだ、潰れてくれないのか。まあ、君にはやってもらわなくちゃいけないことがあるからね」
「……何?」
舞原はため息をついた。
「こんなことにならなきゃ、君にこんな話をするつもりはなかったんだけどね」
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