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「舞原碧です」
端正な顔立ちの少年は、余裕のある笑みを浮かべながら自己紹介をした。
何人かの女子生徒たちは浮ついた声で彼について囁きあっている。すでに流れはファンクラブ結成へ向かっているようだ。
一番後ろの席で頬杖をつきながら棒付キャンディをくわえ、真帆はそんなクラスメイトたちから視線を舞原碧へ向けた。
確かに、整った綺麗な顔をしている。
目に少しかかるくらいのふわりとした髪がまたその雰囲気を優しげにしている。長いまつげは女子として羨ましいくらいだ。輪郭はシャープで繊細だが、弱々しくない。
そのとき、舞原碧が真帆の方を向いた。視線が交錯する。彼は、口の片端を上げるように笑った。
ドキリとした。いや、ギクリという方が正確かもしれない。
真帆は視線を逸らし、首にかけていたヘッドフォンをつけた。何か、見てはいけないものを見たような気がした。
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