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「遠藤、ちょっといいか」
亜紀と何気ない会話をかわしながらお弁当を食べていると、教室の入り口から呼ばれた。
情報処理の授業を受け持つ黒田先生だ。真帆はコクンと頷いて席を立った。
真帆はこの春から中等部のセキュリティシステムの管理を任されていた。
その件で今年からよく黒田先生にこんな風に呼ばれる。今呼ばれたのは次回の更新についての話だ。
真帆は東防中に入り、自分が人の役に立てるということを知った。
そして人の役に立つことの快感を知った。自分の才能を正しく生かすことのできる世界を知り、その道を進むことを決意した。
正しい道を行くことの誇りと、安心。
それは真帆が今まで感じたものの中で、もっとも輝かしいものに思えた。
小学生の頃、一人ぼっちの薄暗い部屋の中で感じた孤独。
その時には思い描くこともできなかった世界へ、真帆は進んでいる。光の方へと。
人の役に立てるということを教えられたときは、まるで君は生きていてもいいんだよと、すべてが肯定されたような気がしたものだ。
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