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「幸せそうだね」
「え?」
机に戻り、弁当の残りを食べ始めた真帆は、その無機質な声に顔を上げた。
舞原碧だった。
亜紀はさっさと弁当を食べ終えて、今はもう自分の席で漫画を読んでいる。
彼は笑った。まるで仮面のような笑顔。何かの上に張り付けられたような笑顔だった。
そのあと彼はクラスメイトに誘われて体育館へバスケをしに行った。
真帆はなんとなく食欲がなくなり、お弁当の残りを鞄にしまった。
舞原碧が転入してきてから、あっという間に一か月がたった。
舞原はまさしくオールラウンダーであった。
勉学でも訓練でも常にトップクラスの実力を見せ、そのトップクラスの多くも苦手とするパソコン関連の講義でも彼は優等生ぶりを発揮した。ファンクラブ会員たちは益々熱のこもった視線で舞原を見つめる。
あっという間にクラスの中心人物になった。
後輩の結衣も舞原に近づく手をあれこれ考えてはいるが、部活にも属していない他校舎の先輩はなかなか遠いようである。
「真帆ちゃん先輩紹介してくださいよぅ」
真帆とコンピュータ部の部室で一緒になると、毎回のように甘えた声ですり寄ってくる結衣には、もううんざりしていた。
軽くスルーしてやるべきことに集中する。
最近、学校のデータベースに不正アクセスを試みようとするやつがいる。
幸い真帆のセキュリティシステムが破られたことはまだないが、黒田先生とも相談し、更新を繰り返している。
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