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「確かにあの子、男子から人気あるからね。あんたからしたら面倒よね」
「それが原因で女子と拗れるのも面倒だし、それに」
「しずくとあたしの立場も面倒、と。ああ、ホント、あんたと関わるとろくな事が無いわ」
自転車のハンドルにもたれて、深い溜め息。
「わかった、引き受ける」
「ありがとう、お礼に荷物でも持とうか、久々に」
「死ねば」
ぐいっとペダルが回されて、ゆかなの二つ縛りが揺れ始める。そのまま急カーブを回って、見えなくなった。
ああ見えて、結構いいやつなんだ、ゆかなは。あれだけ迷惑をかけてるのに、学校ではあくまで傍観者でいてくれる。
昔馴染みのよしみ、って事かな。礼羽さんが昨日あれだけ屈託無かったのも、ゆかなが敢えては話さなかったからだろう。
ゆかなは、僕の最終防衛線だな。と、この時、痛切に思った。
唯一、僕の全てを知った上でまともな会話が出来るのはゆかなだけだ。ゆかなと話している時だけ、僕はまだ辛うじて境界線を踏み越えていない事を確認できる。
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