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教室にいる生徒達は動揺していた。
昨日まで普通の男子高校生だったクラスメートの藤本男悟が、頭を坊主にし、眉毛を細くし、背中には『全国制覇』と書かれた刺繍をしていたからだ。
おまけに何がそんなに気に入らないのか、鋭い眼光で周りに睨み付けている。
昨日下校し今朝登校してくるまでの数時間の間に、一体彼にどんなデンジャラスな出来事があったのだろうか?
生徒達は気になってしょうがなかったが、同時に凄く関わりたくなかったので誰も彼の風貌を指摘せず時間だけが過ぎていった。
そして朝のホームルームの時間になり、担任の山内先生が教室に入ってきた。
山内先生はとてもシャイな人だ。
恥ずかしがり屋で超人見知り、30代前半だというのに一度も彼女が出来たことがないほどのシャイボーイ。
だから教室に入ってすぐに藤本男悟の異様な現状に気付いたが、内気でシャイでチキンな山内先生が声をかけられるわけもなく、何も知らない振りをしながらいつも通りにホームルームを始めた。
……が、それが藤本男悟のかんに障ったらしく、
「何シカトしてくれてんですか先生よぉ!」
藤本男悟は机を叩き怒鳴った。
一瞬ビクリと震える山内先生。
それも気に入らないらしく藤本男悟は席を立ち山内先生に詰め寄った。
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