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 かわりに、私はコツンと頭を叩かれて。 「泣き虫ティアーナ。何を考えてるんだ」  聞きたかった声が、私の頭上から降ってきた。 「俺はそんなに弱っちくないぞ。だいたい、泣き虫なお前を残してやられるわけにいかないんだ」  ふん、と荒く鼻をならして、耳に馴染んだ声が私をすくい上げる。  急のことに戸惑った私は、涙でぐしゃぐしゃの顔のまま、まずメガネの人を見上げた。お父さんみたいに優しい笑みを浮かべて、頷いている。 「私の予言はあたるんだよ」  声に押されるように振り向くと、髪がボサボサに乱れて服も汚れてしまっていたけれど、不機嫌そうな顔をしたフォルトーがちゃんと立ってそこにいた。 「フォルっ!」  すぐ隣にはドレス姿の女の人もアルドネの女の人もいたけれど、私は気にせずフォルトーに抱きついていた。  無事だった。  フォルが無事に、帰って来てくれた。  せっかくフォルトーが無事だったというのに、やっぱり私はわんわん泣いてしまった。ぎゅうっと首もとに抱きついてしまったから、フォルトーも困っただろうと思う。  でもたくさんの、安心とか恐怖とか、そういう感情が一気に体の中から爆発してしまって目や口から飛び出すものだから、私もどうしようもなかった。  いつもみたいに撫でてもらってもなかなか落ち着かなくて、しばらくそのままわんわん泣き続けていた。
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