第一巻 不意にありくべからず

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まだ春先の新鮮な香りが ほのかに漂うあたたかい日。 昼休みも 終わりに近づいていた。 そんな時。 「うぅー。」 撫子は酷くうなっていた。 「どうしたのよ撫子?」 「かーすーみぃー」 そんな撫子の様子を見て かすみ、もとい高橋香純が撫子に対応する。 「次の授業 サーボーりーたーいー!!」 机に突っ伏す 撫子は放っておいて。 「次の授業… あぁ、 ホント嫌いだね撫子。」 予定を確認し 撫子の態度に納得する香純。 「でもダーメ! 単位もらえないよ?」 そう。 高校は義務教育の中学とは違い 単位制なのだ。 単位が貰えない=進級できない。 従って安易にサボることは 許されない。 不便だと思いません? “単位” という言葉を聞いて おとなしくなる撫子… かと思いきや、 「現代人がどうして 今使われてもいないのに 古典なんて勉強しなきゃ いけないのよ!」 と、誰に、という訳ではないが キレている。 しかし香純は至って冷静だ。 「はいはい。 そのセリフは聞き飽きましたよ。」 どうやらこの会話は 日常茶飯事らしい。 そうこうしていると、授業の開始を告げるチャイムが鳴る。 「授業始めるよー。 みんな席に着いてー」 古典担当の平井先生が入ってきた
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