カガチジン

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丘を降り川を挟んだ平野部には大きな屋敷と大きな畑が並ぶ別の集落コノハナがあった。 川に橋は架けられていたが、ジャコツの者達がそれを渡る事は許されなかった。 ある時、コノハナから綺麗な格好をした親子連れが橋を渡ってやってきた。 ムラの者は皆地面に頭をこすりつけるよう平伏し、彼らの顔を見ようともしなかった。 コノハナの者はムラの長に何かを指図しているようであった。 痩せた畑で農作業をしていた少年は木陰から親に付き添う一人の少女を盗み見た。 見たこともない鮮やかな衣服をまとい、とても綺麗で艶のある黒髪の少女――。 ムラでは見られない清らな姿に少年は一瞬にして虜になり、無意識のうちに少女に近づいた。 少女の父親はその様子を見て激怒した。 『カガチの分際で何をしておる!これ以上近寄るな!娘が汚れるではないか!』 ムラに怒号が響き渡り、皆の顔から一斉に血の気が引いた。 少年の父親が急いで駆け寄り、息子を勢いよく叩きはじめた。 『お許し下せえ!こいつはオラからよく言い聞かせます!何卒お許し下せえ!』 まだ幼い少年には分からなかった。 何故父親は自分を叩くのか? 何故皆はひどく恐れた顔をしているのか?そして、なぜ少女は蔑んだ眼差しで自分を見ているのか――。
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