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それから数年後――成長した少年はムラの立場をおぼろげながらも理解するようになった。
このムラの者達は皆カガチジンと呼ばれ、不浄の者の血を引いているのだと――。
しかし、少年は差別はそれだけで起るものとは決して思わなかった。
ムラの者達は怠慢なだけだ、学問や礼儀も得ようとせず全て宿命だからと決めつける。
カガチの者は志が低く身なりさえも整えようとしない――だから蔑まれるのだ。
自分が立派な人間になれば、コノハナの人々も認めてくれるはずだ。
そう思った少年はあらゆる努力を惜しまず自分を磨く事にした。
ほんの少しでいい。
ほんの少しでもあの少女に認めて欲しかった。
剣術は卓越したものとなり、ムラの連中と違い学問の素養も礼儀作法も身につけた。
一度で良いから彼女と話したい、笑顔をもらいたい。
自分が立派な人間になればきっと分かってくれる。
しかし――どんなに頑張っても橋の向こう側――ヤマジジンと同じにはなれなかった――。
少女の口から開かれた最後の言葉。
『二度と近寄らないで…汚らわしいカガチの分際で…』
少女の蔑んだ目はもう変わる事はないだろう
差別と貧困からなる負の連鎖はどこまでも続くだろう
いつからカガチは人としての誇りを失ってしまったのだろう
誰かが断ち切らねばならぬ――
誰かが滅せねばならぬ――
呪われた過去と未来を――
滅せねば――
少年はムラに火を放った。
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