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ホテルからの帰り道、彼の車で私の家の近くまで送ってもらった。
いつも眺めている景色なのに、いつもと違って見えるのは私の気のせいだろうか。
助手席に座っている間、なんだか落ち着かなかった。
家の近くに着き車から降りようとしたとき、彼の手が私の腕を掴んだ。
つい彼の方を振り返ってしまった瞬間目が合った。
だけどすぐに足元に視線をそらした。
そんな私の様子なんて気にも留めないのか、そのまま反対の手で無理矢理自分の方に向かせると、私の顎を軽く持ち上げ唇に触れるだけのキスをした。
彼の吐息を直に感じてしまいそうなくらい顔を近づけたまま、彼が言った。
「またね。」
「…はい。ありがとうございました。」
車から降りて、ドアを閉める。
私が歩き出すと、彼はそのまま走り去った。
「またね …か。」私は自分で自分を嘲笑った。
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