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家に帰り自分の部屋に入るとすぐ、ベッドに身を委ねた。
羽織っていたコートから香ってくる彼の残り香。
その瞬間また涙が溢れ出す。
さっき泣いたばっかりなのに…
こうなってしまうことなんて最初から分かっていた。
彼女でもないのに最後まで抱かれてしまったら、いいようのない感情でいっぱいになってしまうことくらい分かっていたのに。
なのに、どうして私は… 大嫌いな“身体を重ねる”という行為に及んでしまったのだろう。
全て忘れてしまいたくて眠りに落ちようと努力した。
だけど電気を消した部屋の薄暗さが、さっきまでの出来事を鮮明に思い出させる。
私の身体のあちこちにキスを落としていった彼の残像や、彼が何度も私の耳元で囁いた言葉。
私の身体を確かめるように辿っていた彼の指先の感覚。
彼から微かに香ってくる香水の香り。
彼の額から滴り落ちる汗。
その全てが眠りに落ちようとする私の邪魔をした。
結局、一睡もできないまま朝を迎えた。
どうしてこんなことになってしまったのか。
思えば2か月前。
彼に出会ったことから全ては始まってしまったんだ。
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